平成30年度 第53回卒業式・第26回専攻科修了式校長式辞

柔らかな日差しと道前の野に新しい息吹が感じられるこの良き日に、新居浜工業高等専門学校の卒業証書を授与された本科189名の卒業生の皆さん、卒業おめでとうございます。また、修了証書を授与された専攻科23名の修了生の皆さん、修了おめでとうございます。

 

教職員を代表して心からお慶び申し上げます。

 

卒業生、修了生を今日まで支え、励ましてこられました保護者の皆様、ご家族の皆様にも心からお祝いを申し上げますと共に、本校に対してのこれまでのご支援、ご協力に対し深く感謝申し上げます。

 

また、ご多忙の中、この式典にご臨席賜りました新居浜市 副市長 寺田政則様を始め、ご来賓の皆様に篤くお礼申し上げます。

 

さて、国立高専第一期校の新居浜高専を卒業する皆さんは第53期生で、卒業生は皆さんを含めると8000名を越えます。また、専攻科を修了する皆さんは第26期生で、修了生は600名を優に超えています。今年は平成最後の年となりますが、昭和、平成と多くの卒業生、修了生を送り出してきた本校の伝統の重みを感じます。

 

皆さんは、就職あるいは進学、それぞれ新たな道への希望に胸躍らせていることでしょうが、一方で未知なる道への一抹の不安も感じていることと思います。でも心配は要りません。皆さんが受けてきた高専の技術者教育は皆さんの先輩の活躍によって、社会的に高く評価されています。また、海外でも注目されており、「KOSEN」高専は今や国際語になっているといわれています。元号も新しくなる記念すべき年に新しい一歩を踏み出す皆さん、自信をもってそれぞれの道へ進んでください。

 

ところで、最近、高専出身の起業家、すなわち会社を興した人達の活躍をよく耳にします。その多くはICT、情報通信技術関連の企業ですが、大変素晴らしいことと思います。近年のICTの発展は目覚しいものがあり、我々の生活に欠かせないものになっていますが、高専の自由闊達な雰囲気が、こうした起業家を生む土壌になっていると思います。

 

我が国では、第5期科学技術基本計画で「Society5.0」が提唱されています。これはICTやIoT、モノのインターネットなどのデジタル革新により、経済発展と社会的課題の解決を両立させる進化した社会の実現を目指すものですが、この推進はより一層のICTの発展をもたらすと思います。こうした動きは日本にとどまらず世界でも同様であり、世界の企業ランキングの上位はICT関連企業が占めるに至っています。こうした動きの中で高専出身者の活躍の場はますます拡がっていくものと期待しています。

 

一方で、こうした急速なICTの発展は、格差を生み、世界を不安定にしているのも事実でしょう。加えて地球規模の環境破壊や、大きな自然災害が懸念される地球温暖化なども不安定化に拍車をかけているように思います。この解決は並大抵ではありませんが、2015年の国連サミットで採択された「SDGs」と略される「持続可能な開発目標」を実現することが解決に繋がる道と思います。ここには17の大きな目標が掲げられていますが、その中には様々な分野の技術者が協力して取り組まなければ達成できないものも多くあります。言い換えれば、さまざまな分野の技術者のネットワークが必要です。

 

高専教育の特徴はいろいろありますが、精神的にも肉体的にも成長が著しく、また知識や技術を驚くほど吸収できる15歳からの5年間を共に切磋琢磨して学び、あるいは寮で共に生活するということは、自分の考えを持ちながらも互いの違いや考えを理解し合う、すなわち多様性を認め合うことを学ぶということも特徴の一つと思います。そして、このことは将来の技術者ネットワーク形成にとって非常に大切なことと思います。

 

また、SDGsが達成できるような技術者となるために最も重要なことは、社会に出ても自ら学び続けなければならない、常に学び直しが必要ということです。皆さんが、卒業後も本校校歌にあるように「叡智を磨き、技を練り」、世界で活躍できる技術者に成長し、さらに形成したネットワークを活用してSDGsを実現してくれることを 大いに期待しています。皆さんの母校、新居浜高専はこれからも皆さんを応援していきます。

 

最後になりましたが、留学生の皆さん、母国から遠く離れた日本での、また新居浜での3年間の勉学は、言葉の問題や生活習慣の違いがあり、さぞ大変であったことと推察します。これらを乗り越えて今日を迎えられた皆さんに敬意を表します。冒頭に申しましたように、「KOSEN」高専は今や国際語になっていると言われていますが、これが定着するためには高専のより一層のグローバル化が必要です。留学生の皆さんが、皆さんの母国と日本の懸け橋になって、高専のグローバル化に貢献してくれることを期待しています。いつまでも新居浜を忘れないで、機会があれば 再び新居浜を訪ねてください。新居浜高専はいつでも歓迎します。

 

以上、卒業生、修了生の皆さんのご健勝を祈念すると共に、これからの活躍を期待して、式辞とします。

 

平成31年3月15日
新居浜工業高等専門学校長
迫 原 修 治