平成29年度 第52回卒業式・第25回専攻科修了式校長式辞

厳しかった冬も終わり、柔らかな日差しと 道前の野に新しい息吹が感じられるこの良き日に、新居浜工業高等専門学校の卒業証書を授与された 本科198名の卒業生の皆さん、卒業おめでとうございます。また、修了証書を授与された 専攻科20名の修了生の皆さん、修了おめでとうございます。

教職員を代表して 心からお慶び申し上げます。

 

卒業生、修了生を今日まで支え、励ましてこられました保護者の皆様、ご家族の皆様にも 心からお祝いを申し上げますと共に、本校に対してのこれまでのご支援、ご協力に対し 深く感謝申し上げます。

 

また、ご多忙の中、この式典にご臨席賜りました 新居浜市副市長 寺田政則様を始め、ご来賓の皆様に 篤くお礼申し上げます。

 

さて、実践的技術者の育成を目指して高専が設置されてから半世紀以上が経過し、第一期校の新居浜高専では 本日52回目の卒業式を迎えました。高専の技術者教育は 皆さんの先輩の活躍によって社会的に高く評価されており、海外でも注目されています。最近では、新聞、雑誌等に高専の特集記事がしばしば掲載され、技術者教育の素晴らしさが紹介されています。高専教育に対する社会の期待が 一層大きくなっていると感じています。

 

ところで、高専での技術者教育は 社会が求めている技術と共に変わってきましたが、近年、その変化が特に著しいように思います。高専教育の特徴は、座学のみならず、豊富な実験と実習にありますが、今、社会が求めている 創造性を持った実践的技術者の育成には これだけでは不十分で、学校で得た知識を社会で実際に活かしていくための教育、社会実装教育が重要視されるようになってきました。また、一方的に教えられるのではなく、主体的に、能動的に学ぶ、いわゆるアクティブラーニングが 主流になりつつあります。さらに、技術者にはコミュニケーション能力が必要で、これを身に付けるための学習も欠かせませんが、ITが進歩した現代では様々なコミュニケーションツールがあり、これらを適切に使いこなすことも 必要になってきています。皆さんは こうした大きな教育改革の中で 高専生活を送ってきたと言っても 過言ではないでしょう。

 

次に、技術の変化を見てみますと、産業、中でも工業は、これまで機械系、電気系、化学系、建設系などに分類され、それぞれの分野で新たな技術開発への挑戦が続けられてきましたが、どの分野においても 今やITの活用が不可欠で、ITによって技術開発が加速されています。また、大きな方向性は 人工知能、AIの導入、さらには 物のインターネット、IoTの活用でしょう。これらの流れは、産業を従来型に分類することを難しくするだけでなく、分類そのものに意味がなくなり、情報・通信を基軸とする新しい産業構造が 構築されようとしています。また、インターネットで繋がっている現代では、当然のことながら 技術のグローバル化が急速に進んでいます。このような動きは ここ数年顕著になっています。皆さんも様々なメディアを通して このような動きを感じていることと思います。

 

このような急激な技術革新に これから立ち向かわなければならない皆さんにとって 最も重要なことは、社会に出ても自ら学び続けなければならない、常に学び直しが必要 ということです。学校で学んだことは基礎編であり、社会で活躍するための応用編のカリキュラムを これから自分で組み立てなければならない ということです。社会実装教育や能動的な学びの重要性を体験してきた皆さんなら きっと実践できると思います。

 

ただし、是非、胸に刻んでおいて欲しいことは、技術に使われてはならない ということです。技術に溺れ、あるいは技術に使われて、その技術が持つ問題点に気づかずに使ってしまうことがないように、常に自戒することが必要です。技術は我々の生活を物質的に豊かにするだけでなく、精神的な豊かさを与えるために使われなければなりません。そのためには、知性と教養をさらに磨いていく必要がありますし、自分の考えを持ちながらも互いの違いや考えを理解し合う、すなわち多様性を認め合うことも重要です。

 

皆さんが創造性を持った実践的技術者へと成長し、これからの技術革新を牽引してくれることを期待しています。

 

今、皆さんの脳裏には、通い慣れた学び舎や友達と別れる寂しさ、就職あるいは進学への一抹の不安と期待など、様々な感情がよぎっていることと思いますが、新居浜高専で鍛えられた皆さんなら大丈夫です。新居浜高専の卒業生であることに誇りを持って、自信を持って 自分が決めた道を歩んでください。皆さんの母校、新居浜高専は これからも皆さんを応援していきます。

 

最後になりましたが、留学生の皆さん、母国から遠く離れた日本での、また新居浜での3年間の勉学は、言葉の問題や生活習慣の違いがあり、さぞ大変であったことと推察します。これらを乗り越えて今日を迎えられた皆さんに 敬意を表します。これからは、皆さんの母国と日本の懸け橋になってください。そして、いつまでも新居浜を忘れないで、機会があれば再び新居浜を訪ねてください。我々はいつでも歓迎します。

 

以上、卒業生、修了生の皆さんのご健勝を祈念すると共に、これからの活躍を期待して、式辞と致します。

 

平成30年3月16日

新居浜工業高等専門学校長

迫原 修治