平成28年度 第51回卒業式・第24回専攻科修了式校長式辞

柔らかな日差しと道前の野に新しい息吹が感じられるこの良き日に、新居浜工業高等専門学校の卒業証書を授与された本科200名の卒業生の皆さん、卒業おめでとうございます。また、修了証書を授与された専攻科20名の修了生の皆さん、修了おめでとうございます。
教職員を代表して心からお慶び申し上げます。

 

卒業生、修了生を今日まで支え、励ましてこられました保護者の皆様、ご家族の皆様にも心からお祝いを申し上げますと共に、本校に対してのこれまでのご支援、ご協力に対し深く感謝申し上げます。

 

また、ご多忙の中、この式典にご臨席賜りました新居浜市参与 阿部義澄様を始め、ご来賓の皆様に篤くお礼申し上げます。

 

さて、高専が設置されて半世紀が経過し、第一期校の本校では、51回目の卒業生が巣立っていきます。また、全国に先駆けて設置された専攻科も24回目の修了生を送り出すこととなり、歴史の重みを感じます。

 

卒業生、修了生の皆さん。皆さんは、就職あるいは進学という新たな道への不安を感じているかと思いますが、皆さんの先輩達の社会での活躍によって、高専設置の目的である実践的技術者の育成は社会的に高く評価されています。後に続く皆さんへの期待も大きいと思いますが、自信を持って信じる道を歩んでください。

 

ここで、科学技術に興味を持って高専に入学した皆さんが過ごした5年間、あるいは7年間を、日本の科学者のノーベル賞受賞で振り返ってみましょう。修了生の皆さんが本科に入学した平成22年には鈴木章・根岸英一両先生が化学賞を受賞され、卒業生の皆さんが入学した平成24年には山中伸弥先生が生理学・医学賞を受賞されました。その後も受賞が続き、7年間で9名もの科学者がノーベル賞を受賞されました。その内のお一人である中村修二先生に本校で講演をして頂いたことは、皆さんの記憶に新しいことと思います。また、昨年の大隅良典先生の授賞式には世界から25名の若者が招待されましたが、日本からは京都大学大学院生と香川高専の専攻科生が選ばれました。これらのニュースは、皆さんにノーベル賞を身近に感じさせると共に、日本の科学技術の素晴らしさ、無限の可能性を感じさせたことと思います。高専で学ぶ皆さんにとって大いに刺激になったことと思います。

 

一方、現在の科学技術では制御できない自然の大きな力を見せつけられた出来事もありました。本科生が入学したのは未曽有の大災害、東日本大震災の翌年ですが、その後も熊本地震など大きな地震が多発しました。中央構造線という大断層に接する新居浜に暮らす我々にとっても他人ごとではありません。地震のみならず、大規模な自然災害を目の当たりにすると、科学技術の限界を感じざるを得なかったと思います。

 

また、科学技術の発展を人類が等しく享受しているとは必ずしも言えません。先進諸国の科学技術の急激な発展によって、世界に貧富の差が生じているのも事実です。暴動やテロが世界各地で起こり、難民が世界に溢れていますが、貧富の差もその一因と考えられています。

 

しかしながら、科学技術は目覚ましい勢いでこれからも発展していくことでしょう。自然災害の被害を最小限に抑えるためには、予測技術や対策技術のさらなる発展が必要ですし、世界の人口の急激な増加に対応し、エネルギー問題を解決するためにも科学技術の発展が不可欠です。

 

そこで、卒業生、修了生の皆さん。科学技術の重要性を十分認識している皆さんには、これからの科学技術の発展に積極的に係わり、貢献して欲しいと思います。この時に重要なことは、まず我々一人一人が自分の考えを持ちながらもお互いの違いや考えを理解し合う、すなわち多様性を認め合うことと、新しい技術を正しく用いる見識を持つことです。このことを是非、心にとどめておいてください。

 

皆さんは本校での教育を通して実践的技術者としての基礎を十分学んできましたが、科学技術の進歩に貢献するためには、変化に柔軟に対応できる技術者、世界で活躍できる技術者、さらには新しい技術開発を牽引する技術者へと自分自身を成長させることが必要です。そのためには、さらに高度な技術的知見を吸収すると共に、知性と教養をもっと磨いていく必要があります。これからが本当の意味での自学自習の実践です。皆さんの頑張りに期待しています。

 

ところで、皆さんにはたくさんの友人ができたことと思います。人生で最も多感な時期に、5年間あるいは7年間を一緒に過ごした仲間は、一生の宝物です。これからの長い人生の中で壁に突き当たることも多いと思いますが、皆さんは決して一人ではありません。相談できる多くの仲間がいます。皆さんの母校、新居浜高専も皆さんが活躍できるようこれからも応援していきます。

 

最後になりましたが、留学生の皆さん、母国から遠く離れた日本での、また新居浜での3年間の勉学は、言葉の問題や生活習慣の違いがあり、さぞ大変であったことと推察します。これらを乗り越えて今日を迎えられた皆さんに敬意を表します。これからは、皆さんの母国と日本の懸け橋になってください。そして、いつまでも新居浜を忘れないで、機会があれば再び新居浜を訪ねてください。我々はいつでも歓迎します。

 

以上、卒業生、修了生の皆さんのご健勝を祈念すると共に、これからの活躍を期待して、式辞と致します。

 

平成29年3月16日

新居浜工業高等専門学校長

                                迫 原 修 治