平成27年度 第50回卒業式・第23回専攻科修了式校長式辞

長く厳しい冬も終わり、柔らかな日差しと道前の野に、新しい息吹を感じるようになったこの良き日に、新居浜高専の卒業証書を授与された本科183名の卒業生の皆さん、ご卒業おめでとうございます。また、修了証書を授与された専攻科生30名の修了生の皆さん、修了おめでとうございます。
教職員を代表して心からお慶び申し上げます。

 

また、卒業生、修了生を今日まで支え、励ましてこられた保護者の皆様、ご家族の皆様にも心からお祝い申し上げますとともに、新居浜高専に対してのこれまでのご支援、ご協力に対し深く感謝申し上げます。

 

また、ご多忙の中この式典にご臨席賜りました、新居浜市長 石川勝行様をはじめ、ご来賓の皆様に、篤くお礼申し上げます。

 

本日の卒業式は、50回目の節目を迎えました。これまでに、7300名を超える卒業生を送り出してきた新居浜高専の伝統の重みを、卒業生の皆さんと改めてかみしめたいと思います。

 

皆さんは、就職あるいは進学、それぞれ新たな道への希望に胸躍らせていることでしょう。入学した時は、卒業までの5年間あるいは修了までの7年間を、非常に長く感じていたと思いますが、巣立っていく今を振り返ると、あっという間ではなかったでしょうか。それは皆さんの学生生活が、充実していた証です。

 

さて、皆さんが入学する直前に、未曽有の大災害、東日本大震災が起こりました。実際に自分の目で被災地を見た人も多いと思い ますが、科学技術が発達した現在にあっても、大自然の猛威に対する人間の無力さを感じたことでしょう。皆さんの学生生活は、まさにこの復興と共にあったと言えます。復興はまだ道半ばですが、この震災を機に、世の中の価値観が大きく変わったように思います。この大きな変革の中で、皆さんは多感な学生生活を過ごしました。このことは皆さんの心の成長に、大きな影響を与えていると思います。

 

価値観の変化の中で最も顕著なものの一つは、我々の生活を支えているエネルギー問題でしょう。化石燃料や原子力に頼ってきたものが、自然エネルギー重視の方向に変わりつつあります。しかし、自然エネルギーにどれだけ依存できるのか定かでなく、これからのエネルギーの確保に対して、大きな不安があるのが現状ではないでしょうか。また、エネルギー問題は、地球温暖化などの環境問題と密接に関係しており、我々はかつて経験したことの無い、深刻な地球規模の環境問題に直面しているといっても過言ではないでしょう。

 

一方、世界に目を向けると、いまだに続いている人種差別や富の奪い合い、地球規模での環境の変化などによって貧富の差が拡大し、これが原因と思われる暴動やテロが頻発し、難民が世界に溢れています。これも、エネルギー問題と無縁ではないと思われますが、まさに先の見えない時代になっています。

 

これらの問題解決は容易なことではありませんが、一番大事なことは、まず我々一人一人が自分の考えを持ちながらも互いの違いや考えを理解し合う、すなわち、多様性を認め合うことと、さらに皆さんが目指している技術者においては、解決を図るための新しい技術開発に果敢に挑戦し、 新たに手に入れた技術を、正しく用いる見識を持つことと思います。

 

皆さんは本校での学生生活を通して、実践的技術者としての基礎と多様性を認めることの大切さを、十分学んできました。これからがいよいよ実践です。そのためには、さらに高度な技術的知見を吸収するとともに、知性と教養をもっと磨いていく必要があります。本当の意味での自学自習の新たなスタートです。

 

ところで、皆さんにはたくさんの友人ができたことと思います。非常に多感な時期に、5年間あるいは7年間一緒に過ごした友は、一生の宝物です。高専でしか得られない友です。これからの長い人生の中で、自学自習を実践し続けることは並大抵ではなく、壁に突き当たることも多いと思いますが、皆さんは決して一人ではありません。相談できる多くの友がいます。皆さんの母校、新居浜高専も、皆さんが活躍できるようこれからも応援していきます。皆さん、技術者として、我々を取り巻く様々な問題の解決に果敢にチャレンジして下さい。

 

最後になりましたが、留学生の皆さん、母国から遠く離れた日本での、また新居浜での3年間の勉学は、言葉の問題や生活習慣の違いがあり、さぞ大変であったことと推察します。これらを乗り越えて今日を迎えられた皆さんに、敬意を表します。これからは、皆さん の母国と日本の懸け橋になってください。そして、いつまでも新居浜を忘れないでください。機会があれば、再び新居浜を訪ねてください。我々はいつでも歓迎します。

 

以上、卒業生、修了生の皆さんのご健勝を祈念するとともに、これからの活躍を期待して、式辞と致します。

 

平成28年3月15日
新居浜工業高等専門学校長
迫 原 修 治